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GPフル参戦も2年目。この年にチャンピオンが獲れなくても、翌年にチャンピオンになるための準備期間として、トップ争いに絡むつもりだった。2年目で各サーキットも覚えたし、レース環境にもなじんできたし、僕自身も、周りの人たちも期待していた。
ヤマハとしてはルカ・カダローラがいなくなり、ケニー・ロバーツ(ジュニア)とジャン-ミッシェル・バイル、そして僕という布陣。僕には「エースライダーとしてヤマハの看板を背負うんだ」というプレッシャーもあったが、それと同時に「頑張らなくちゃ」とモチベーションも高まっていた。
ところが初戦のマレーシアGP(シャーラム)は、表彰台争いどころか、思い通りの走りすらできない。続くインドネシアも9位とさんざんな結果で、「エースとして失格だ……」とかなり落ち込んだ。
そんな状況で、第3戦日本GP(鈴鹿)を迎えた。地元ということで期待も大きかったし、僕自身「ここで一発いいところを見せなきゃ!」と気合いが入っていた。
それなのにフリープラクティスも予選も全然うまく走れず、しまいには雨の土曜日の走行で転倒……。
決勝日は、「本当にマズイ!」という焦りと、「でも結果を出したい」という思いが入り交じっていた。朝のフリー走行でセッティングを変え、さらに決勝直前にセッティングを変え、スターティンググリッドに並んだ。セッティングがうまく行かなかったことで、自分にできることは、少しでもいい走りをすることしか残されていなかった。
いざレースがスタートしてみると、自分でも驚くほど、トップについていくのが苦ではなかった。どんどん前に出て先頭に立ち、自分のペースで走れるようになってからサインボードを見ると、「+3秒」と表示されていた。
「そんなに引き離してるのか!」と自分でも驚いた。ただ、レース後、周りの人に「無我夢中で周回数も分からないほどだったんじゃない?」と言われたが、自分でも意外なほど冷静で、1周1周きちんとカウントしていた。
そして最終ラップ。ゴールラインが見えてくる。「あのラインを超えたら、オレが優勝!?」と、本当にうれしかった。トップでチェッカー受け、ウイニングランの間は、今までに感じたことのない達成感でいっぱいだった。
ピットに戻った時、スタッフが本当に大喜びで迎えてくれ、中には泣いている人までいて、それを見て僕も涙が止まらなくなってしまった。
レース後は記者会見の嵐で、たくさんのメディアにも取り上げられて、「こんなに注目してくれるんだ」と、改めて世界GP500ccクラスのすごさを実感した。
鈴鹿の優勝で、自分としては走り方をつかんだつもりで、ヨーロッパラウンドに臨んだ。ところが第4戦スペインGP(ヘレス)は、練習、予選とうまくいかなかった。「決勝はいけるはず」と信じていたが、2周目に転倒。前戦の優勝でどこか有頂天になっていた僕は、「GPの世界はそう甘くはないな」と我に返らされた。
この年は、鈴鹿の優勝を含めて4回表彰台に立った。第9戦イギリスGP(ドニントンパーク)は、94年に初めてヤマハで走ったサーキット。その時は金曜日のフリー走行3周目に転んで病院行きになり、苦手意識があった。
ところがこの年は、金・土と意外といい感じで走れて、「このまま決勝もいけるかな」と思っていたら、実際に3位表彰台に。苦手意識が克服できた。
続く第10戦オーストリアGP(A1リンク)は、この年がGP初開催。条件はみんな一緒だったし、僕が得意なスリッピーでバンピーなコースで、予選6位、決勝3位。自分としてはもっと上にいけると思っていたので、悔しい表彰台だった。
第14戦リオGPも悔しい3位だった。ここは僕が好きな左回りでバンピーなコース。得意意識があった。実際、フリー走行や予選でも安定して速く走れていて、予選2日目もずっとトップ。でも最後の最後にミック・ドゥーハンにタイムを更新されてしまい、悔しい2番手グリッドとなった。
レースではドゥーハン、アレックス・クリビーレとトップ争いをしていたが、残り5周というところで周回遅れと絡み、コースアウト寸前に。ドゥーハンはコースアウトしてしまい、その隙にクリビーレがトップに立った。
ところがその後のドゥーハンの追い上げが強烈! 残り周回数はわずかだったのに、リズムを崩してペースを上げられなかった僕をパスし、しまいにはクリビーレに追いつき、追い越し、優勝してしまった。3位にはなったものの、ドゥーハンの底力を見せつけられた驚きの方が大きかった。
この年はホンダが断然有利で、エンジンパワーも最も差がある年だった。「パワーさえあればドゥーハンにも勝てるのに」といつも感じていた。ただ、翌年にチャンピオン争いをするための準備だとすれば、ランキング5位という結果はまずまず。21歳になったばかりで、GP2年目としては悪くない。「来年こそチャンピオンだ」という思いで、シーズンを終えた。
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